Lektion 37, Text 1

第三十七課 一 新しい住宅

ヤーン一家はこれまで、六人で三部屋みへやの狭い住宅に住んでいました。大分前から申し込んでいましたが、今度、レーニン広場の新しい団地の六階に五部屋の住宅がもらえることになりました。いつ引っ越していてもいいと通知をもらってから、まだ三日しかたっていませんが、一家はうれしくて落着きません。四人の子供たちは、どうせ引っ越すのから、早い方がいいと言っています。けれども、いろいろ手続きもあるので、引っ越しは、どんなに早くても二週間後にするしかないのだから、それまで待ちなさいとヤーン夫妻は子供たちにわからせるように何度も説明しました。それなら、日曜日に新しい住宅を見に行って、部屋をどう分けるか決めようと子供たちが主張しました。ヤーン夫妻もそのことで互いに喧嘩しないと約束するなら、そうしてもいいと賛成しました。

ヤーン一家は日曜日には普通なら、八時か九時ごろ起きます。けれども、きょうは別で、子供たちは六時ごろから騒ぎ出しました。静かにしなさいと何度叱っても聞かないので、両親も仕方なく起きました。一番年下で、来月七歳になるペトラちゃんはすっかり興奮してしまい、朝ご飯にはミルクしか飲もうとしませんでした。一切れだけでもパンを食べないのなら、きょうはいっしょに連れて行かないと言われ、やっと一切れだけ食べました。

ヤーン一家は九時ごろ、レーニン広場の新しい団地に着きました。十階建てで、まだ二、三家族しか引っ越してきていないようです。ヤーン一家はさっそく六階の自分たちの住宅に行きました。セントラル・ヒーティングも入っていますし、台所も、洗面所も、いつでも湯が出るようになっています。住むのなら、やはり新しいところの方が便利だとヤーン夫人はとてもうれしそうです。子供たちは、五つの部屋を見て回って、どれを自分たちの部屋にしようかと相談しています。十五歳のフランク君と十歳のトマス君が、二人でいっしょに一番大きい部屋がしいと主張すれば、十三歳のマリナちゃんとペトラちゃんも、同じ部屋がしいと頑張っています。子供たちの討論をしばらく聞いていたヤーン夫妻は、それぞれが自分のことばかりしか考えないのなら、もうここに引っ越して来るのもやめようと強い調子で言うと、子供たちは急に黙ってしまいました。

こうして、日曜日に新しい住宅を見て来てからは、ヤーン一家はそのことしか話さなくなってしまいました。そして、今度はむしろヤーン夫妻の方が、どうせなら早く引っ越す方がいいと言い出しました。ヤーン夫人の弟さんも暇から来てくれるはずです。引っ越しが土曜日なら、ヤーン氏の会社の同僚も手伝ってくれるでしょう。

あしたヤーン一家は、いよいよ新しい住宅に予定より一週間早く引っ越すことになりました。

十五年以上も住んだこの古い住宅には、ヤーン一家にとって忘れられない思い出がたくさんあります。あしたは大変だから、早く寝なさいと子供たちには言いながら、ヤーン夫妻はおそくまでなかなか眠れませんでした。


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