Lektion 32, Text 2

第三十二課 二 日本の産業(一)

ランゲさんは、過去二十年間の日本工業のめざましい発展に関心を持っているそうですが、今度は日本に来る機会を得て、とても喜んでいます。きょうは新幹線で東京から大阪方面まで、ある貿易会社に勤めていて日本の経済にくわしい青木さんといっしょに出掛けてみることにしました。二人が乗った「ひかり号」は川崎の辺りを走っています。

ランゲ「この列車は世界で一番速いそうですが、乗り心地もいいですね。」

青木「窓ガラスは特別のガラスなので、車内は割合に静かです。もう何回も乗りましたが、楽ですね。ところで、日本の印象はどうですか。」

ランゲ「日本中どこも活気に満ちていますね。正直に言って、驚いでいます。日本では、鉄鋼業、造船業が盛んだときいていますが、自動車の生産も最近は随分伸びていますね。街でも外国産の車は、ほとんど走っていないようです。」

青木「日本は資源に乏しい国で、石油などの重要な原料は主に海外からの輸入に頼ってきました。日本は輸入した原料を加工して輸出することが多く、自動車も例外ではありません。ほら、あそこに建設中の大きい工場が見えるでしょう。ある自動車会社が工場を広げているのだそうですよ。」

ランゲ「大きいですね。一度日本の自動車工場を見学してみたいのですが、むずかしいでしょうか。」

青木「そうですね。けれど、知り合いの人にできるかどうか、さっそく聞いてみましょう。ただ、日本の大工場では安全と清潔が第一ですから、あまり外から人が見学に来るのを好まないようですね。ところで、お国でも、機械工業、線維工業、化学工業などの水準が高く生産量も高まり、質も向上しているそうですね。」

ランゲ「ええ。私の国では、工場はほとんどすべて国営で、生産が長期的な国家計画経済に基づいて進められているので、危機やインフレは全くありません。」

青木「うちやましいですね。一度お国へ行って工場を見学したり、労働者と話したりしてみたいのですが、忙しくてなかなか実現しません。」

ランゲ「ドイツ民主共和国には、まだ一度もおいでになったことがありませんか。」

青木「ええ。ソ連には何度も行きましたが、お国へは残念ながら、まだです。お国には、いい工作機械や紡績機械もあるそうですね。」

ランゲ「ええ。ところで青木さん、いつか一度ゆっくり日本の経済や働く人々の労働条件や賃金などについてお話を伺ってみたいのですが、少し時間をとって下さいませんか。」

青木「そうですね。私もいろいろお国のことについてお尋ねしたいですし…。それでは来週何とか都合をつけてみましょう。」

「ひかり号」は、京浜地帯を時速二〇〇キロもの速さで走り続けています。二人が下車する大阪までは、まだ二時間半以上もあります。


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