Lektion 33, Text 1

第三十三課 一 女の子

私は三人兄弟の一番下で一人娘という家庭環境に育ちました。上の兄は三つ、下の兄は二つ私より年上です。私は小さい時から、よくこの二人の兄たちと遊んだり、喧嘩したりしました。外で遊ぶのに不便なので、スカートをはかせられたり、きれいな洋服を着せられるのが、大きらいでした。ところが、兄たちと木に上ったりすると、母に必ず、女の子なのに危ないなどと注意されました。また私にそんなことをさせてはいけないと、かえって兄たちが叱られました。娘がいるのにちっともそんな気がしないし、まるで男の子が三人いるようだとか、このごろはあきらめて、娘に息子たちが着て小さくなったズボンを着させているなどと、母が父にこぼしているのも時々耳にしました。その度に、やさしくていい母なのに、私がただ女の子だからという理由で、なぜ兄たちと別のことをさせたいのか、どうしても理解できませんでした。兄たちは、勉強が忙しいといえば掃除や台所の片付けをさせられなくてもすむのに、私はどんなに勉強が忙しくても、お皿を洗わせられたり、買物に行かせられるのが、不満でした。

そのころ、おばかよく家に遊びに来ました。このおばは母の妹で、ある大学の化学研究所で研究員として働いていました。結婚していなくて自分には子供がいないのに、兄たちにはとても人気があり、私もこのおばが大好きでした。その理由は、来る度に私について嘆いたりする母に、「お姉さんは、ご自分でも女は家事ばかりさせられてつまらないなどとこばしているのに、娘に同じことをさせるのはおかしいですわ。男の子にも家事をどんどん手伝わせる方がいいですよ。この点で家庭教育は何よりも大切です。女の子にもやりたいことを自由にやらせる方がよいということを、男の子にも早くからわからせておく必要がありますね。お姉さんもまだ若いのに、家事ばかりで毎日を終わらせてしまうのはつまらないと思いませんか。」などと意見を述べて、私を喜ばせてくれたからです。

ある時、このおばに、「おばさんのようにいい人は珍しいのに、どうして結婚しないの。」と聞いてみました。すると、おばは明るく笑いながら、 「二本でも、特に若い人たちの中には理解のある男性が、このごろは増えてきているそうよ。でも女の人で、研究に熱中していて、お料理もお掃除もあまりしたくないような人を奥さんにもらってくれるほどの男性は、まだなかなかいないようよ。」と答えました。

もうあれから十年も過ぎたのに、おばにも、私にも、残念ながらまだ理想的な男性は現われていません。


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