Lektion 32, Text 1

第三十二課 一 夢の話

子供たったころから一度も夢を見たことがない人は、ほとんどいないと思いますが、私の友だちで、画家の井上さんは逆によく夢を見るそうです。その上、夢に色があるそうです。専門家の意見によると、色に対して特別に関心を持っている人や、画家などの、職業の上で色を扱うことの多い人には珍しくないそうです。夢に色があればどんなに楽しいことかと思いますし、一度はそんな夢を見てみたいと思いますが、残念ながら、私の夢は、いつも白か黒の感じです。その代り、私の夢に出てくる人々が話す言葉は、どれもとてもはっきりしています。これは、私が何か国語かを勉強し、いつも言葉に深い注意を払って暮しているからだと思います。このように、夢と、それを見る人の職業や、その人が関心を持っていることとは深く結びついているようです。

また、夢からその人の性格もある程度までは判断できるそうですが、いろんな人の経験を聞いてみると、これも正しいようです。そこできのうの夜見た夢について書いてみたいと思います。

実はきのう、友だちといっしょに、「日本沈没」という映画を見てきました。これは、大地震で日本が沈没してしまい、何千万人もの日本人が新しく住む土地を求めて外国に逃げ出すという、本当におそろしい内容の映画でした。いくつもの光景が忘れられないままに寝たためが、そのことについて夢を見ました。

夢の中で私は、逃げまどう多くの人々の一人でした。何軒ものこわれた家や木は流され、互いに助けを求めて叫ぶ人々の声が、辺り一面に響き渡っていました。その時突然、目の前に荒れ狂う海が広がり、私は一瞬のうちに呑まれてしまいました。何も見えない真暗な中を何時間も泳いだような後で、急に辺りが明るくなり、私はどこかを歩いているような感じになりました。よく見てみると、そこは広いすばらしい庭で、その奥に立派な家がありました。そして、家の中から、にぎやかな笑い声が聞こえてきました。よく聞いてみると、どうもみんな私のことを話しているようです。それも声から考えると、小学校時代の友だちや、大学でいっしょに勉強した友だちや、その地の知り合いで、互いに知っているはずのない人たちが集って私のことを話していました。それぞれの声や話の内容はよくわかりながら、その家の中には、私がいくら捜してもだれも見つかりませんでした。もう捜し疲れてしまったと思った時、私は目がさめました。例えば、こんな夢から私の性格について、専門家はどのように考えるかいつか聞いてみたいと思っています。


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