Lektion 26, Text 1

第二十六課 一 試験の前日

あしたは午前中に英語の試験があり、あさっては日本語の試験があります。ですから、きょう、友だちのロレンツさんから電話で、いっしょに映画を見に行かないかと聞かれましたが、まだ試験の勉強が終っていないから、残念だが無理だと答えました。ロレンツさんは、この一年間に勉強しなかったことを一日で習えるはずがないし、あまり意味もないと思うから、是非いっしょに行かないかと重ねて聞きました。

英語は私の得意な科目だし、あまり心配する必要もないかと思いますが、日本語は、まだあまり自信がありません。特に日本文からドイツ語に訳す試験は、日本人の考え方がよく理解できないと、正確に訳せないことがあります。けれども、ロレンツさんが言うように、日本人の考え方を一日で知ることはできません。先生も、この一年間に学生たちが、日本についてどんな本を読んだか、また、その内容をどれぐらい理解したかは、日本文をドイツ語に正しく訳せるかどうかに大きい影響を与えるとよく話していました。

この二、三か月の間に、私はルース・ベネディクトの「菊と刀」をはじめ、日本の歴史や経済や社会問題についても五冊ぐらいは読みました。また、日本語の文法は、まだよくわからない点もあるかと思われますが、確かに、あさってまでに扱に全部を習うことはできません。このように考えると、きょう、三時間は四時間ぐらい英語を見て過ごすか過ごさないかは、あさっての試験にとって、あまり重要ではないと思われてきました。

それで、私は今晩はロレンツさんといっしょに映画を見に行くことに決めました。けれども、あまりおそくなると困るから、映画を見た後は、いつものようにビールを飲みに行ったりしないと電話で答えると、ロレンツさんは笑いながら、では何時にどこで会えるかと聞きました。

二人で見た映画は、ソ連の映画で、第二次対戦中にナチの軍隊との戦闘で戦死したあるソ連兵士が、どのような一生を送ったかの話で、私は非常に感激しました。

映画が終ってから、すぐ家に帰って勉強するつもりでしたが、ロレンツさんが、ビールを飲みに行かないかと提案し、私もやはりその方がいいし、ロレンツさんといろいろ話したいと思ったので、いっしょに近くのレストランに行きました。

家に帰ったのは、十一時ごろでしたが、映画を見に行って、かえってよかったと思いました。


Weiter