シュルツさんは、去年フンボルト大学の日本学科を卒業してから、外務省に勤めています。時々日本から来る人たちの通訳をシナければなりません。シュルツさんは、これまでにも何度か通訳をしたことがありますし、この仕事がきらいではありません。けれども、通訳という仕事が非常にむずかしいということを知らない人たちのために訳さなければならない場合などは、本当に楽ではないと思うことはよくあります。
あわてていたりすると、やさしいことを間違えてしまいますし、会話の通訳は、まず内容をよく理解した上で、そのニュアンスを正確に伝える努力をしなければなりません。特に国際会議などでの通訳は、そこで討論される問題についての理解がないと、困難なことがあります。
疲れてくると、急に日本語の単語や表現を忘れてしまうこともありますが、討論が続けられている間は、休めませんし、通訳を続けなければなりません。そんな時、シュルツさんは、通訳という仕事は、本当につらいと思うことがあります。
日本語とドイツ語の通訳がむずかしい理由の一つは、それぞれの文法が、全然違うという点にあります。例えば、日本語では、「…です」や、「…と思います」、「…ではありません」や、「…とは思いません」などの言い方が、文の一番最後にきます。ですから、通訳は、話している人が一つの文を終えるのを待っていないと、正確には訳せません。このことを知らない日本人やドイツ人は、どんどん話を続けてしまいますし、通訳は、それを聞きながら、その前にすでに話されたことを訳さなければならないので、特別な集中力が必要です。
また習慣が違うために、通訳するのがむずかしいこともよくあります、例えば、日本語の表現は一般にとても丁寧ですが、それをそのままドイツ語に訳すと、あかしいドイツ語になってしまいます。また、ドイツ語の表現は、日本語よりはっきりしていることが多く、そのまま日本語に訳すと、日本人がびっくりしたり、気分を悪くしたりすることがあります。
先週もベルリンで、ある国際会議が開かれ、シュルツさんは、日本の代表たちのために通訳をしなければなりませんでした。この会議は、五日間続き、その間は、全然休めませんでしたし、毎日家に帰って来た時はとてもくたびれて、ご飯も食べられないほどでした。通訳という職業は、特に家庭を持っている女性の場合は、大変だし、むずかしいとシュルツさんはいつも思っています。