Lektion 40, Text 2

第四十課 二 日本の産業(三) 農業

ランゲさんは、三週間ほど日本各地を視察して、先月末ベルリンに帰って来ました。きょうは、日本の農業について話してくれと頼まれたので、ポツダム県のある農業産業協同組合を訪れました。農繁期だからあまり人が集まらないかもしれないと思って来ましたが、五十人以上もの人々が押し掛けてきました。ランゲさんが、まず基本問題に触れた講演をした後で、出席者から次々に質問が出されました。

質 問「日本の農業就業人口はどのくらいですか。」

ランゲ「一九七五年の公式によると、総就業人口のわずか一・二パーセントに過ぎません。特に青年が農業にとどまる率は激減しています。青年とは限らず、壮年の男性の多くは、農業地帯に進出してくる大企業の工場に賃金労働者として吸い込まれていくので、農作業が老人や婦人の肩にそっかりかかっている場合が増えています。みなさんには、ちょっと想像しにくいにちがいないと思われるほどです。」

質問「日本は、米や豆などの穀物をどの程度、時給していますか。」

ランゲ「米の生産は、国内の需要を上回り、余るほどです。けれども、米に次いで大切な麦や大豆は欠乏していて、ほとんどを外国からの輸入でまかなっています。野菜は大体自給しています。しかし、平均して穀物の約六〇パーセントを外国に頼っているという状態は、日本人全体の食糧供給に大きな不安をもたらしています。胃袋の半分を外国にあずけてあるみたいなわけだからです。」

質問「機械化はどの程度進んでいますか。」

ランゲ「日本経済の高度成長の中で、農業の機械化も急速に進み、トラクターなども約七〇パーセントの農家に入っています。一九七〇年ごろから大型機械も普及してきました。けれど、農業や集約化されていない日本で、農民個人が機械を購入するのでは、負担が大き過ぎることがよくあります。それで、農民たちは、公共機関に訴えたり交渉したりして、共同利用、故障の修理、部品の取り替えなどへの援助を実現させる運動なども起こしているようです。一般に、農民大衆の政治的意識も高いという印象を私は受けました。」

質問「農業における公害の問題はどうなっていますか。」

ランゲ「公害は農業に限らず、日本産業全体に共通した重大な問題ですね。農業でも、収穫を増すために化学肥料が開発され、いろんな農薬がどんどん用いられた結果、中毒による死亡事件も発生し、その他の犠牲者が出たこともあるそうです。」

質問「日本の農民はどんなことを望んでいますか。」

ランゲ「政府が、重化学工業を一方的に重視するというかたよった政策を改め、農業を国の基本的生産部門としてもっと保護する政策をとってほしいという意見を何度も耳にしました。政府が、農業をもっと奨励し、農民が安心して働けるような安定した農産物の価格制度を確立することが緊急だと主張する人たちもいました。ドイツ民主共和国の農業や、農民の生活について話す機会も何度かありましたが、大抵はみんなとてもうらやましがっていました。」

こうして、熱心な討論が二時間以上も続きました。


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