Lektion 38, Text 2

第三十八課 二 友人への手紙

信一君

すっかりご無沙汰してしまいましたが、相変らず毎日忙しいですか。この前会った時、少し工合が悪く胃が痛むなどとこばしていましたね。あれから医者に行きましたか。神経や消化器官の病気になると、治るのに時間がかかります。本当に無理をせず、早く医者に見せるべきです。仕事も大切ですが、すべては健康であってこそなのですから、くれぐれも気をつけて下さい。人のことばかり言わず、自分こそ気をつけると君に叱られそうですが、僕は先週、総合健康診断を受けてきました。体格をはじめ、心臓、血液などを検査されました。少し太り過ぎていて、もう五キロはやせるべきだと注意されました。その他は、おそらく満足すべき結果が出ると思いますが、最終的には来週わかります。

さて、健康のことは、これくらいにしますが、君は最近どんな小説を読みましたか。僕は、これまで傑作といわれているものでさえあれば、何でも手当り次第に読んできました。途中でやめられず徹夜して読んだことも何度かありました。そして、小説を何でもたくさん読みさえすれば、文学を理解する力は自然に身につくと単純に考えていました。ところが、先週ドイツ文学を専攻しているいとこが遊びに来て、興味深いことを話してくれました。何でもゲーテになると、趣味というものは、中流の作品によってではなく、最高の作品によってこそ養われる、だから、もしそれさえ理解するならば、それこそが他に対する基準となり、他を過大に評価せず、正しく評価できるようになるそうです。何を最高の作品というべきかという点こそ、むずかしい問題です。けれども、作品を選んで読んでこそ、正しい評価の基礎がつくられるというのは真実だろうと思います。是非君の意見を聞かせて下さい。

きのう、高校時代のクラス会の通知葉書が届きました。あいにくその日は、学習会などで予定がつまっているので、それでも行くべきかどうか迷っています。君さえ出席するなら、僕もちょっと顔を出します。島田君から電話で、是非出席しろと催促されましたが、君の返事を待ってから決めます。

島田君といえば、最近またスピード制限の違反で罰金を払わせられたそうですよ。運転の腕自慢をいい加減にしないと、いつか始末に負えない事故を起こすから、気をつけるべきだと、電話できつく忠告しておきました。それでも、島田君は、資金さえ集まれば、近いうち、友だちを誘って日本を南から北の端まで自動車で旅行すると張り切っていました。あまりよく考えずに、すぐ行動に移る島田君は、君と実にいい対照だと思いましたよ。

では、返事を待っています。こ家族のみなさんによろしく伝えて下さい。

十月九日  晴夫


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