Lektion 31, Text 2

第三十一課 二 地震

日本にも、いろいろなことわざがあります。その一つに、もしこの世の中にこわいものがあるとすれば、それは地震、雷、火事、親父だという意味のがあります。最期の親父について言えば、最近は、むしろ泥棒の方がこわいなどと冗談を言う人もいます。それはともかく、確かに日本では地震と火事が多いようです。技術が高度に発達した国、日本でも、特に地震をある程度予告することはできても、予防することはまだできないようです。一九二三年の関東大震災をはじめ、いくつかの大規模な地震による災害は、実際に体験した人でなければ、そのこわさがわからないほどひどいものでした。「日本沈没」という、日本が地震などの自然の災害で滅んでしまうというような問題をテーマにした小説がベストセラーになったりするのも、日本でなければ考えられないことでしょう。

私はあるポーランド人を知っていますが、その人は、おととしから日本に来ていて、日本のことは何でも見ておきたいと意欲的に歩き回っています。その人も地震だけは苦手で、これがなければ日本はすばらしい国なのだがと言っています。一度夜中に激しく揺れた時は、あわてて寝間着のまま外に飛び出して日本人に笑われてしまったが、それでも、ホテルや旅館に泊まる時は、もし地震が来た場合は、どうすれば一番安全に逃げられるか、その方法をよく確かめてから寝ると話してくれました。

この前、ある団地の十階に住んでいる日本の友だちのところで昼ご飯をご馳走になっていた時、急にぐらぐらと揺れ出したので、さすがの私もとっさに緊張し、すぐ避難しなければ危ないと立ち上りました。ところが、日本の友だちは全く平気で、落着いたまま、「大丈夫ですよ。すぐやみますから。このくらいの地震はいつものことですし、このアパートが倒れれば、その前に日本中は火の海になってしまいますから、逃げ出しても助かるはずはありません。こういう時は、あわてればあわてるほど無駄ですよ。」と食べ続けてうたので、私は心の底からびっくりしました。

確かに日本では、平均して三日に一度は、坐っていれば気がつく程度の地震があります。日本は端から端までいくつかの山脈が連なっています。その中には火山も多く、今も絶えず煙を吹いているのも少なくありません。このような地震の原因となっている自然の条件が、同時に富士山などの美しい景色や箱根などの温泉を生み出しているわけです。一方では、思い掛けない時に暴れ狂いながら、地方では、やさしく寛容で美しい自然に対して、日本人は欧米人とは違ったおそれの感覚と深い愛情を抱いていると、私はしみじみ思います。