Lektion 28, Text 2

第二十ハ課 ニ 日本人とテレビ

日本でテレビ放送が開始されたのは昭和二十八年(一九五三年)で、それ以来、爆発的な勢いと言っても言い過ぎではないような速度で、テレビは日本人の生活の中で普及してきました。昭和三十五年には、世界で二番目の国としてカラーテレビ放送が始まりました。こうして、マスコミ手段の中でも、テレビの果たす役割がラジオに代って急速に高まってきました。公式に発表された統計によると、すでに昭和四十二年には日本の家族百世帯のうち八十四世帯にテレビがあり、これは四・五人に一台の割合でした。こうしてテレビが日本人の社会的、文化的生活に及ぼす影響は、無視できないほどになりました。

日本には、NHK(日本放送協会)以外に、公告、宣伝放送の料金を収入源としている民間のテレビ局があります。例えば、東京では午前六時ごろから午後十二時ごろまで、七つの番組が放送されています。テレビの普及率と並んで問題になるのは視聴率です。それが低い連続テレビ番組などは、途中で放送が中止されることもあります。また、いい番組でも、くり返して放送されるのは、まれです。

テレビが日本人の生活の中でどんな位置を占めているかは、まず一般の人々が一日にどれぐらいテレビを見るか、また、どんな番組を、どんな態度で見るかなどを調べることで、ある程度は判断できます。

うちの子は勉強はしなくてもテレビは必ず見るとか、主人はどんなに忙しくても、そのことにどんなに不満があってもテレビの娯楽番組は必ず見て時間を無駄に費しているなどと、主婦たちが嘆いたり、非難したりするのをよく耳にします。もちろん、年齢・性別・階層・職業・教育の程度などによってさまざまですが、昭和四十五年に日本人は、ふだんの日には平均して一日約三時間、日曜日には約四時間テレビを見て過ごしています。これは、他の国に比較しても長いということが、統計によってもわかります。

一般にニュースやニュース解説などの報道番組は、多くの人が注意深く見ていますが、ドラマ・映画・軽音楽やクイズなどの娯楽番組は、見ても見なくでもかまわないで、つけ放したままになっている場合がよくあります。特におもしろいと思わなくても消さないで、時々目をやりながら、他の仕事をしている人が多いのも事実です。お客さんが来ても、そして会話に邪魔になっても、あまり気にしないという家庭の光景は、日本では珍しくありません。そして、このような見方をしている人々でも、テレビが故障したりして見られなくなると、急に物足りなく感じる人が多いのは、興味深いことです。