明治以来、外国の多くの日本研究者や、日本に何年か滞在したことのあるジャーナリスト、あるいは学者などによって、そして最近は、特に日本の評論家、作家、学者などによって、日本人についての論文や本が、実にたくさん書かれてきました。
これらの中で、日本人は勤勉か勤勉でないか、礼儀正しいか正しくないか、秩序を守るか守らないか、科学的で合理的な思想や精神を尊重するかしないか、宗教的か宗教的でないか、などと、日本人がさまざまな観点から観察されています。
ある国民全体を一つの対象としてこのように論じることに一体意味があるかどうかは、別の問題です。フランス人やドイツ人について一般的に論じられている本は、あまりありませんが、まさに日本人について多くの本が現実に書かれているというのは、注目しなければならない事実です。
いろいろな点から考えると、このように日本人について多くの本が書かれてきた理由の一つは、日本人が他の国民に比べて、決して単純な国民ではないという点にあります。特に欧米人にとって興味深く、また時として理解しにくいのは、日本人が極端な矛盾と対照的な面を同時に持っているということです。
ルース・ベネディクトが、一九四六年に書いた「菊と刀」は、日本人の多くの行動や考え方を分析して、日本文化の型を把握したすぐれた本です。この中で、日本人の性格について書かれている部分は、特に印象的です。
しなわち、ベネディクトによると、日本人は非常にけんかが好きであると同時におとなしく、威張ったり相手をばかにすると同時に礼儀正しく、がんこであると同時に順応性を持ち、従順であると同時に他人から干渉されることにひどく腹を立てます。その上、忠実で寛容であると同時に不忠実で意地悪で、勇気があると同時に臆病です。また、保守的であると同時に新しいものを喜んで受け入れるという傾向を持っています。
これらの二つの相互に全く反する性格を日本人が個人として、また全体として多かれ少なかれ持っているということを、よく知っているかいないかは、日本文化をよりよく理解するために重要なことです。日本人のこのような性格が形成されてきた歴史的な根拠は、うろいろあります。いずれにしても、このような極端な矛盾は、日本社会の構造と、その近代化の発展の過程に深く結びついているという点を、よく理解する必要があります。