東京のある大学の講師している川村さんは、ヨーロッパ演劇史が専門で、特にベルトルト・ブレヒトを十年前から研究しています。去年の九月から二年間ヨーロッパに留学する機械を得、いつかヨーロッパでブレヒト劇を見たいと思いた彼女は、とてもうれしく思いました。
川村さんは、まずソ連に行きました。モスクワでは、ブレヒトの戯曲をいくつか見ることができました。川村さんはロシア語が全然できませんが、ブレヒトの作品の内容はよく知っているので、楽しく鑑賞することができました。
ソ連では、芝居もおもしろかったですが、川村さんにとって一番印象に残ったのは、社会てきな、そした経済てきな生活のあらゆる分野で、男性も女性も、全く同じ権利と義務を持っているちう点でした。モスクワのいろいろな劇団の演出家や俳優と、ソ連の演劇界の問題などについて話し合いました。そして、女性の演出家や女優が、劇団の他の同僚たちと全く同じ条件の下に、芸術活動に参加していることを知り、うらやましく思いました。もちろん、女優のイワノワさんが、働いてうる婦人のいろいろ具体的な例をあげたように、結婚している場合や、子供がある場合は、やはり家事の負担が女性の方に多くかかり、夫の理解や協力がない場合は、社会主義国のソ連でも簡単ではありません。けれども、妻が女優としての仕事を続ける条件は日本の場合より恵まれていると思いました。
川村さんは、高校時代の友だちで、女優だった人が結婚した後は、女優の仕事を続けたいという希望を捨て、家庭の主婦になってしまった例をしきりに思い出しました。
今年の一月初めから、川村さんはベルリンに滞在しています。ベルリンには、ブレヒトが創立したベルリーナ・アンサンブルがあり、川村さんはこの劇場のレパートリーは同じものを何度か見ました。川村さんは人気のある俳優やすぐれた演技に対して観客が盛んに拍手し、率直に反応することに感激しました。劇場はよく満員になり、時々切符を手に入れるのが困難ですが、入場料が安いので、若い人たちや働いている人たちを含むすべての階層の人々が演劇を見に来ます。ドイツ民主共和国では、国家が演劇やオペラなどの芸術活動を奨励し、財政的援助を惜しまないので、すぐれた芸術を普通の人たちが安く見ることができると、文化シ省のリヒターさんが川村さんに説明しました。
川村さんは、ベルリンには六月までいます、その後も、どこかヨーロッパの他の国で、ブレヒト劇を見たいと思っています。